早春のクローバーの花一輪、シロツメクサの強さの秘密とは?
共生という生き方を考えてみる
シロツメクサはマメ科の多年草の植物です。2月でも去年の株が残っていて、まだ花が咲いていました。繁殖力があり丈夫なので過酷な場所でも生えています。強さの秘密は、窒素肥料を作る根粒菌が付いているからです。根粒菌とマメ科植物が一緒に生活し、宿主のマメ科植物が光合成をした物質を根粒菌に与えます。根粒菌はそのエネルギーを使って窒素をアンモニアに変える窒素固定を行い、固定した窒素を植物にあげます。炭素と窒素の物々交換をしているのです。
根粒菌と共生して自分で肥料を作る植物の巧妙な仕組み
共生のための窒素固定に適した維管束の構造
物々交換をし易い構造
炭素と窒素の交換・流れをスムーズに行うために、維管束が根粒菌感染細胞を取り囲むように発達しています。植物からのエネルギーや根粒菌が固定した窒素をスムーズに運ぶようになっています。
生きるヒント1:情報交換の仕組み
共生とは、いっしょに生きてゆくこと、異種の生物が相手の足りない点を補い合いながら生活する現象です。人間社会へのアナロジーとしては、維管束は物流、情報の流れ、意思疎通に相当します。共生のベースには、スムーズな情報交換の仕組み、相互に取引しやすいシステムが必要ということですね。
危険な相手と共生するには
微生物である根粒菌は植物への侵入微生物です。植物の防御システムが根粒菌を防御するのを避けるために、侵入者である根粒菌と植物細胞の細胞質が直接触れないようにして植物側の防御反応を起こさないようになっています。
生きるヒント2:付き合うためのルール
植物の防御システムを介して、敢えて危険な相手と共生することによりメリットを享受するのですね。人間界でのアナロジーとしては、互いにルールを守り、セキュリティ対策を介して付き合うことで社会的共生が保たれることに照らし合わせました。
根粒菌増殖を制御し、根粒菌を飼いならし、固定窒素を横取りする機能
宿主植物が贅沢な食事を与えて根粒菌を飼いならす
根粒菌は共生していないときは炭素源なら何でも食べます。しかし、共生状態になるとリンゴ酸しか食べなくなります。リンゴ酸は即エネルギーになる良い基質であり、共生根粒菌はリンゴ酸だけを食べるように変わります。そのかわり植物側がリンゴ酸に分解して渡し、根粒菌を飼いならしています。
生きるヒント3:共生関係の継続策
飴と鞭は手なずけるための懐柔策ですが、危険だがメリットを提供してくれる相手に飴の味を覚えさせて骨抜きにしてしまえば浮気せず、互いに固定客化できてWin-Winの共生関係が継続する。人間社会のあちこちで思い当たりますね。付き合う相手を見定めて決めたら互いに誠意をもってお付き合いせよということかしら。
固定窒素をもらうために根粒菌にアミノ酸をさしあげる
リンゴ酸で飼いならしたら次は、宿主植物が固定窒素を横取りするための戦略です。共生している根粒菌が必要な窒素源は、宿主植物がアミノ酸の形であげています。根粒菌がアミノ酸取り込みを止めてしまうと、宿主植物への固定窒素放出が止まります。つまり、宿主植物からアミノ酸をもらっていると、根粒菌は窒素を固定し続けて固定窒素をどんどん宿主植物に提供するわけです。
生きるヒント4:サプライチェーンの維持
アミノ酸という原材料を共生相手である外注先に提供して固定窒素に加工させて納入させている。光合成、原材料生産、外注加工、仕入れというサプライチェーンが維持されているのですね。
根粒菌が増えすぎないように一定に維持する宿主側のコントロール
根粒の数が過剰になると宿主が疲弊してしまいます。根粒が形成される信号が地上部の宿主植物に届き、根粒組織形成を抑制するフィードバックがかかり、根粒数を一定に保つという仕組みがあるそうです。それにより、宿主植物が根粒菌を養う負担が制御さるわけです。
生きるヒント5:最適化戦略
人間社会では、例えば付き合う相手の要求に応じるのが負担になりそうだと何らかの対策を打ちますよね。経営面では、市場規模とか経営資源に応じてサプライチェーンのバランスをとる最適化戦略ですね。根粒へはどんな物資によりフィードバックされるのでしょうか?フィードバック効果が出るまでのタイムラグはどのくらいでしょうか?興味深い共生現象ですね。
相互確認:共生する相手を確かめるプロトコル
共生を行なう前に相互に相手を確かめることをします。
①植物から根粒菌へまずフラボノイドの信号を放出し、
②根粒菌がそのシグナルを受け取ると、根粒菌から植物へ「これから感染するから準備をしなさい」というシグナルを出します。
③根粒菌という相手を確認してから、植物側が本格的な準備を始める、というプロセスになっている。
この初期相互作用は、微生物と植物の相互認識機構のモデルとして 有名な話です。(出典:「根粒菌とマメ科作物の相互作用」東北大学大学院生命科学研究科教授 南澤 究)
生きるヒント6:信頼関係の確認プロセス
信頼関係を確認するためのプロトコルは、ログインパスワード、お見合い、紹介、契約など人間社会でもお馴染みですね。環境変化への対応にはリスクを負う局面を伴うことが多いわけです。植物が自分を守りながら共生に伴うリスクを負わないと生存し続けることができないのですね。
川辺でシロツメクサの植物画スケッチしました
川辺でのひと時
サイクリング途中、自転車を降り、ゆったり流れる川面を前にして小一時間。植物の生き方に学びつつ、観察しながらスケッチしました。
川の水で水彩絵具を溶き彩色
早春なのでまだ昆虫が寄ってこないので過ごしやすいひと時でした。多摩川河川敷の草花の生存戦略を思いながらの、細部を観察してスケッチしました。
シロツメクサの花言葉は「約束」
春風を意識した雰囲気に描きました。
四つ葉のクローバー、わりと見つかりますよ
四つ葉のクローバーの花言葉は「幸運」、葉の枚数により花言葉が異なるのですね。春先には四つ葉のクローバーは意外と見つかるものです。4月になったらサイクリングがてら、四つ葉のクローバーを探しにでかけませんか?
レンタサイクルでシロツメクサの共生という生き方を学ぶ河川敷
①様々な個生、民族、生物が相手の足りない点を補い合って生活する共生という現象に思いを巡らせました。シロツメクサが人間社会へのアナロジーを与えてくれました。
②植物の養分を運ぶ維管束は物流、情報の流れ、意思疎通に相当し、共生には円滑な情報交換の仕組み、相互に取引しやすい仕組みが必要ということですね。
③根粒菌という危険な侵入微生物と敢えて共生することによりメリットを享受する仕組みがあるのですね。人間界でのアナロジーとしては、ルール、セキュリティ対策等を介して付き合うことで社会的共生が保たれるわけです。
④共生相手との信頼関係つくり、Win-Winの共生関係の継続の仕組みも人間社会への投影として思い当たることが多いです。
⑤共生相手を確認するためのプロトコルは、ログインパスワード、お見合い、紹介、契約など人間社会のみならず、生物のコミュニティ形成段階でもみられますね。
⑥社会経済環境の変化への対応にはリスクを負う局面を伴うことが多い。植物も自分を守りながら共生に伴うリスクを負わないと生存し続けることができないことに気づきました。