オオイヌノフグリ、ホトケノザの生態と生存戦略

レンたサイクル, サイクリング
オオイヌノフグリ
河川敷のオオイヌノフグリ

したたかなオオイヌノフグリ

目次

昆虫を利用した繁栄策

早春に先駆けて咲く、星の瞳といわれるだけあり、星のような可憐な花が見る人をしゃがませます。アリの生態を利用して繁殖を広げる植物です。種子のくぼみの中にはアリが好む物質が付いており、アリが種子をくわえて巣の中まで運び、種子が広がっていきます。植物自身が移動できないという弱みを補うために、種子という子孫を運んでくれる昆虫を利用します。

生きるヒント1:移動できない弱みを補完

自身の目的(種子を広範にばらまくという)達成に対する弱みを補完してくれる相手を選び、相手の欲するものと目的をセットにして相手にゆだねる作戦である。

暖かい場を提供して虫を誘引し、花粉を運ばせるための仕組み

ブルーの花弁の内側は湾曲しており、太陽光の集光により温度が高くなっています。昆虫が日光浴できるような暖かく快適な場を提供して虫を誘います。次に、誘った昆虫に花粉を着けるために、花芯に潜り込もうとする虫がオシベの基部に触れると、葯を動かし花粉をこすり付ける傾震運動をします。オオイヌノフグリのオシベは2本ですが、2本の雄しべの間にアブなどが入ると雄しべの先の花粉が虫の背に着きます。

生きるヒント2:直帰させない施策

集客施策により訪問したユーザーを直帰させないために、ユーザーの欲するものや情報を提供、コンバージョンへ誘導する。

オオイヌノフグリの生存戦略

受粉しなければ種ができず、子孫を残せない。草花の生存戦略は、寿命が短い自分自身が生き残ることではなく、いかに子孫を残すかにあります。(参考書:道草の名前 子どもと一緒に覚えたい (momobook)稲垣栄洋)

戦略1:ライバルの少ない、寒い早春に花を咲かせる

冬から早春に花を咲かせる植物にもチャンスがあります。木の葉は落ちており、生い茂った葉が少なく太陽の光を受けやすいからです。まだ寒いので病気や虫も少ないのです。
受粉を助けてくれる虫もまだ少なく、他の植物はまだ伸びていません。ライバルの少ない時期を狙っオオイヌノフグリは秋に芽を出し、冬を過ごし、誰よりも早く花を咲かせます。そして、少ない昆虫たちを独占します。前年の秋から施策が開始されて実施されているのですね。暖かそうな場所を用意して昆虫を招き寄せ、滞在させて、送粉させる。

生きるヒント3:

ブルーオーシャン戦略の一種でしょうか。

戦略2:受粉確立を高める花の構造

施策1:花弁の先から中央に向かう線模様が、蜜が奥にあることを虫に伝えます。
施策2:花が不安定な作りになっており、花に止まった虫が蜜を吸おうとした瞬間に花が揺れて、振り落とされそうになり花に虫がしがみつく。その時、雄しべの花粉が虫に着く仕組みです。その花粉を着けた虫が次の花に飛んでいき、雌しべに花粉をつけることにより受粉完了。

生きるヒント4

訪問したユーザーを蜜に誘導しつつ、蜜の提供を渋ってユーザーをイライラさせて多くの花粉を運ばせる絶妙の仕掛けですね。限られた量の蜜という経営資源を有効に使って目的を達成するための花の構造を有している。

戦略3:虫なしで受粉する

他の花の花粉で受粉するのではなく、自分の花粉でも受粉する(自家受粉)です。自家受粉は近親交配のために必要な遺伝子の多様性が得られませんが、自家受粉は仕方ない最後の手段です。オオイヌノフグリも、子孫を残し生き残るために、他家受粉と自家受粉を駆使して懸命に生きています。

生きるヒント5

一年草故に、種子によりなんとしても子孫を残さねばならない。近親交配による子孫であっても、次の子孫で生物多様性を確保する作戦でしょうか。

ホトエノザ

早春のホトケノザ

早春のサイクリングロードで出会う可憐な花、いちはやく春の訪れを告げるシソ科の越年草。葉の出方が仏様の座る蓮華座に見たててこの名称。この可憐さに匹敵する花が周囲に見られない時なのので、人間にとって相対的に可愛さが高まるのでしょう。早いもの勝ち。

ホトエノザ
植物画
ボタニカルアート

バイクを降りて植物画スケッチ

全国的に幅広く分布していますが、広く繫殖できた理由は種子に含まれる成分も関係しています。アリの好む糖・脂肪酸・アミノ酸が含まれており、アリが餌として巣まで持ち運ぶとのことです。花をルーペで観ると美しさ倍増。
君、何座? ホトケノザ?、新型インフルエンザ? 3月上旬に描いたので魚座ですの。
この植物にはどんな生存の仕組みがあるのだろうか、と思いをめぐらせながらのひと時でした。

ホトケノザの生存戦略:蕾のままでも自家受粉して実を結ぶ

ピンクの筒状花弁の奥に蜜を貯めています。筒口の下唇は虫の足場となり、紫の斑点を目印に虫を誘導します。ハチなどの虫が奥へ潜り込むと背中にオシベとメシベが触れて受粉します。小さな蕾のように見えるのは閉鎖花です。閉鎖花の内部でメシベがオシベの花粉で自家受粉して結実します。虫が来なくても確実に種子をつくる戦略です。

早春の可憐な植物の生き方に学ぶイクリング体験

オオイヌノフグリ、ホトエノザに出会い、どの植物も、その種単体では生きていけないことを実感しました。人間社会における企業、コミュニティなどの戦略への示唆の多いサイクリングでした。

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